山椒?

2008/05/24 Sat 17:22

今から4年ほど前のこと、一組のご夫婦がランチにいらっしゃいました。
ご主人は普通の会社員とは明らかに違う黒尽くめのいでたちで、ちょっと怖そうな雰囲気を漂わせた方でした。お話してみると意外なことに(失礼ですね)かなり庭仕事がお好きな様子。うちの未開発な庭がその方の作庭家魂を刺激してしまったようで、いきなり「これからうちの庭を見に来ないか?」とお誘いをいただきました。結局、時間的に無理なこともありその方の大町のご自宅に伺うことはできなかったのですが、とても興味をそそられました。と言うのもその頃のスタジオーネの庭はただ広い芝生に数本の木々といった殺風景なもので、庭作りは私たちの最重要課題だったのです。しかし素人の私たちには広すぎて、どうしたらよいのか悩むばかりだったのです。

それから数日後の朝、突然その黒尽くめのお客様がスコップと数本の苗木とおまけに数メートルの長いゴムホースを持って現れたのです。そして素早く芝生の数箇所に穴を掘りその苗木を6本ほど植えてあっという間に去って行かれたのです。その作業代も苗木代もタダ、水やり用のホースまでいただいてしまい恐縮する私たち。そしてますます膨らむあのお客様は何者?という疑問。植えてくださったのは”サンショウバラ”という山梨に自生する珍しいバラでした。そして後日、またあのお客様から白いホトトギスの苗と共に一冊の本をいただきました。、ページをめくると美しい花々の写真と知的で深い文章、そして最後に著者の紹介を読んで驚きました。あの黒尽くめの方は芥川賞作家で庭に関する写真集やエッセーも多数出版していらっしゃる小説家だったのです。その後、何冊かその方の本を読みましたが、庭作りに対するストイックな姿勢と美意識に圧倒されました。サンショウバラのありがたみが増したのは言うまでもありません。
そのサンショウバラも年々成長し、花数が増え、気がつけば庭での存在感が随分大きくなりました。そしてこの開花の時期、多くのお客様から「なんで山椒の木にピンクの花が咲いているの?」と不思議がられそこから会話の花が咲くこともしばしば。
美味しいお料理と雄大な北アルプスの風景そして美しい庭の花々。スタジオーネの自慢がまたひとつ増えました。                2008.5.24


 
ひとりごと
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